経営の悩みを解決するグループ法人税制の活用方法

 

 会社を複数所有のオーナーにとっては、将来の事業承継対策やグループ内での取引について税務上、留意点が多いことが気がかりの方も少なくないと思います。また、今後事業を展開し、複数の会社で1つの事業を経営しようと検討中のオーナー経営者の皆様にとっては、グループ全体をどのような組織関係にすれば最も効率が良いのかについて予め検討しておきたいとお考えではないでしょうか。

 本トピックは、当事務所に寄せられた質問から一部内容を変更し解説しております。グループ経営を検討中のオーナー様は是非ご一読ください



【目次】

  ◇グループ法人税制の利点と移行方法

   Action1  それぞれの事業を切り離して、単体の法人格を持たせる。

   Action2  親会社の機能役割を設計する


  ◇グループ法人税制により親会社に無税で資金のプールが可能!?

   Action3  親会社の役割としてグループ全体の資金効率を向上させる


  ◇親子関係会社の組織形態とし、事業承継をスムーズに行う方法とは

   Action4  親会社となっている株式のみを後継者へ移転させる

    Backgroupnd 決算申告はそれぞれの会社で行う 





グループ法人税制の利点と移行方法

 

 会社を複数所有のオーナーにとっては、将来の事業承継対策やグループ内での取引について税務上、留意点が多いことが気がかりの方も少なくないと思います。また、今後事業を展開し、複数の会社で1つの事業を経営しようと検討中のオーナー経営者の皆様にとっては、グループ全体をどのような組織関係にすれば最も効率が良いのかについて予め検討しておきたいとお考えではないでしょうか。

 今回はグループ法人税制を活用することで享受できるメリットを中心に、当事務所に寄せられた質問から一部内容を変更し解説致します。

 

□企業オーナー様の現状□

創業数十年を経過している建築資材製造業を主たる事業としている法人様

 

 当社は、建築資材製造業をメイン事業としつつ、その他不動産賃貸業、小売業を営む会社です。その他、私個人から息子が代表となっている情報通信業の法人へ出資しています。事業ごとの成績としては、建築資材製造業はこのところの建築ラッシュで好調に推移しているものの、小売業については大型スーパーの進出で苦戦を強いられています。不動産賃貸業はアパートとテナント契約であり今のところ安定しています。

 全体の成績で見れば黒字ではありますが、それぞれの事業の詳細な損益について把握できておらず、また相互の事業の関連性がかけ離れている為、事業の方向性を示す意思決定がなかなか定まらないという問題があります。また、息子が代表をしている法人の大株主も私であることから、株式を息子にどう移していくかについてもそろそろ考えないといけない時期に来ました。

 

 

Action1 それぞれの事業を切り離して、単体の法人格を持たせ、完全子会社化する。

 

 問題解決のために、本件の論点をまとめました。まず、それぞれの事業にある程度の規模があり、仮に切り離して単体の法人としたときでも単独で十分経営していく力があること。

 これが確認できたことから、既存の法人は不動産賃貸業のみを残し親会社とします。最も業績が良くさらに規模も大きい建築資材製造業と、業績が伸び悩み今後大きく方針転換が必要な小売業をそれぞれ新設分割の方法で切り離すこととします。さらにオーナーが筆頭株主となっておりご子息が代表を務める法人と、既存の法人は株式交換の方法で完全子会社とします。

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 この計画を実行し、既存の会社を親会社として、新設分割によって設立した2社並びに、株式交換の方法で息子さんが経営する情報通信業を完全子会社として、グループ法人税制が適用可能な組織体系とすることが狙いです。

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Action2  親会社の機能役割と組織体制を設計する

 

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 上図のような組織体系とし、それぞれ100%子会社にはこれまでの各事業部長を代表取締役に据え、監査役として親会社の経営企画部長を置くこととしました。親会社には不動産賃貸業を残しておりますが、主にグループ全体の経営戦略の要として機能するように、経営企画部、財務経理部を設置し、定款の主な目的もグループ全体の経営戦略策定と統括、事業管理に変更をしました。

 オーナーは親会社でまず、グループの経営理念を明確に定め、グループ会社への周知を行い、これに基づいて各種規程の整備を開始しました。これによりグループとしての行動規範と、〇〇グループという、グループブランドの統一化を図ることが狙いです。

 

【計画実行の効果測定】

 このような組織形態とすることによって、それぞれ事業の関連性がかけ離れていたためこれまで戦略が立てづらかったものが、単体の法人とすることによってその事業の自立性を高め意思決定を素早く行い推進力の向上が期待されます。さらに、グループ全体のマネジメントはオーナー社長が行うものの、各子会社には事業を行うための権限と責任を委譲することになりますので、それぞれの子会社のポストに就く幹部職員のやる気とやりがいを高める効果もあります。これは幹部職員ならずとも、各事業で働く従業員の士気にもつながります。

 さらに今回のケースでは、オーナー社長が筆頭株主であり息子さんが代表の法人も将来の事業承継を視野に入れて完全子会社としました。異なる法人が一つに統合する場合、合併という方法も考えられます。しかし、この2社は株主が同一なだけで、もともと全く別の組織体です。そのため合併を選択した場合に企業文化が異なるため、お互いがなじまない可能性もあります。そこでグループ法人として親子関係とし、これをもって統合という形にした方がスムーズにいく場合があるのです。


【留意点】

 このような組織形態とすることの留意点としては、単体法人の経営成績は明るみになるものの、グループ全体として経営成績、財政状態がつかみにくくなります。但し、当事務所では連結会計導入の支援を得意としていることから、この点はサポートが可能です。さらに留意点として、それぞれの事業を独立した会社とすることで、企業グループの求心力の低下につながる危険性があります。そのため、本件の場合にはオーナー社長がこれを回避するために左記で説明したような対策を即座に取りました。

 留意すべきポイントとして、最後に法人税額の増加の可能性もあります。複数事業を抱えていたグループ経営に移行する前の法人の場合、各事業の損益が通算できていた(黒字事業と赤字事業の損益が相殺され、利益が少なくなりその分法人税額が低くなる)ものが、グループ法人の組織形態へ移行することで1法人、1事業となり損益の相殺ができません。その結果、グループ全体として納税金額が多くなる場合があります。




グループ法人税制により親会社に無税で資金のプールが可能!?

 

Action3 親会社の役割としてグループ全体の資金効率を向上させる

 

 組織再編を終了し、それぞれの事業が独立採算の会社として経営活動を行いつつ、親会社では連結会計を導入してグループ全体の経営成績と財政状態を把握することができました。

 この組織形態をもっと活用するために、親会社へグループ全体の資金効率を上げ、資金の有効利用ができるようにします。グループ内で余剰がある法人から資金を一旦親会社が吸い上げてプールしておき、設備投資や事業展開等で資金が必要な法人へ効率的に融通するのです。これが可能になれば資金調達が非常にスムーズかつスピーディに行うことができますので、どのようにこれを実行するかについて詳しく解説致します。

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 まず、グループ内での余剰資金を親会社へ移転させる方法ですが、親子関連会社という利点を最大限生かし、親会社は受取配当金として資金を吸い上げます。受取配当金は、一旦子会社側で配当金を支払う際に源泉徴収がされ、控除後の金額が親会社へ移転されますが、親会社の決算申告の際に受取時に源泉された分が戻ってきます。つまり、結果として受贈益などの利益とならず無税で親会社へ余剰資金を移転させることが可能になるのです。

 

 親会社にプールされた資金は、必要に応じて子会社へ貸付けを行えばいいのです。この時の金利は、貸付け時点での市場の金利を参考にすると良いでしょう。こうすることで、外部資金にできるだけ頼らずに、そしてスピーディに必要な資金を調達することが可能になります。

 

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 さらに100%のグループ間である場合には、親子会社間又は兄弟会社間での現金の寄附は、支出側では寄附金として費用とは認められませんが、受け取った側でも益金不算入となるため利益とならず、課税されずに現金を受け取ることができます。

 これにより例えば、投資で資金を調達し、返済する必要がないようにしたいと考えた時に、グループ法人税制を活用しない場合は増資を検討しますが、この方法では返済不要でかつ、資本金を増加させることなく資金を受け取ることが可能となります。

 但し、100%のグループ間でない場合は、このような取引を行うと、支出側では寄附金として上記の処理と変わらないのですが、受取側では受贈益となり受け取った金額に法人税が課税されます。この時の100%とは個人による支配ではなく法人による完全支配関係が成立している場合のみを指します。

 

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【まとめ】

 グループ法人税制を活用して親会社である持株会社へ子会社の余剰資金を集めておき、事業の展開や設備投資等の検討をするときに資金調達が非常に効率的かつ選択肢が増えるということになります。つまり、グループ法人以外の場合では、資金が必要となった時の選択肢は、金融機関からの借入れ、増資が主たる手段ですが、グループ法人とすることによって、金融機関のみならず親会社からの借入れや、返済の必要が無い寄附金での資金融通が可能になるというわけです。



親子関係会社の組織形態とし、事業承継をスムーズに行う方法とは

 

Action4  親会社となっている株式のみを後継者へ移転させることによって事業承継が完成する

 

 残る課題はあと一つ。法人の株式をいかに後継者である息子さんへ移転させて、事業承継を完了させるかです。最初に、息子さんが代表となっている法人も含めてこのようなグループ組織形態にしたのは理由があります。それは、法人が増えたとしても、このような形にすることでそれぞれの会社で株式移転を行う必要がなく、親会社株式のみを後継者へ移転することで、結果的にすべての会社の株価を移転したということができるからです。

 このグループ組織形態をもう一度ご覧いただくと、それぞれの子会社が親会社へぶら下がる形となっており、さらに親会社はそれぞれの子会社株式を100%保有しています。

 

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 つまり、親会社の株主をピラミッドの頂点として、末端の子会社まで事実上支配していることになるのです。このため、事業承継対策として株式を移転しようと計画した時に、親会社株式を後継者へ移転させることで完了することができます。


 仮に、今回のような組織再編を行う前に株式を移転しようとした場合には、株式の移転は、建築資材製造業をメイン事業とする既存法人の株式と、息子さんが代表を務める法人の株式の両方を移転する必要があり、それぞれでコストが発生してしまいます。組織再編後のグループ法人の形態は事業承継対策として株式を移転する際にも効力を発揮するのです。


 さらに、株価が高額になっていると予測される場合には、何らかの引下げ対策が必要になりますが、この株価引下げ対策も親会社のみで行えばよいことになります。




 

Background 決算申告はそれぞれの会社で行い、事業年度は統一する必要はない

 

 組織再編後、グループ法人へ移行したあとに良くいただく質問として、すべてのグループ法人の事業年度を統一する必要があるのかというのがあります。結論から申し上げると事業年度、つまり決算期を統一する必要はありません。

 組織全体でみるとグループとして一体ではありますが、それぞれ単体の法人の集合体にすぎませんので事業年度はばらばらで構いませんし、法人税の申告書もそれぞれの法人で作成して申告・納税を行うことになります。

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 ただし、「連結納税」を導入したいという場合は別です。

 連結納税制度では、各グループ法人で決算期が異なる場合には本来の決算期とは別に「みなし事業年度」を置きます。このみなし事業年度で決算を組み、企業グループを代表して連結親法人が、連結申告書の提出と納税をすることになります。

 連結納税制度の利点としては、グループ内に赤字法人がある場合、その法人の欠損金額を他のグループ法人で出た利益と通算(相殺)することが可能な点にありますが、これは、本ニュースレターで解説しているグループ法人税制では認められておりません。

 

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